西表島カヌーツアー風車スタッフブログ

 ヨナグニサン 2014年6月10日


みなさん、こんにちは!

先日、ツアー中にヨナグニサンという蛾(ガ)を見つけました。残念ながらすでに死んでいましたが、西表島で暮らしていてもなかなか見かけることのできない貴重な生物です。

◆日本最大、世界最大級の蛾

ヨナグニサンは日本最大、世界でも最大級の大きさの蛾で、ゴジラに出てくるモスラのモデルにもなったともいわれています。

日本最西端の与那国島で発見されたことから「ヨナグニサン」という名前になったそうです。日本では与那国島、西表島、石垣島にのみ生息し、沖縄県指定天然記念物でもあります。

◆アヤミハビル

与那国島には、ヨナグニサンの生態を映像やパネルなどを使って詳しく紹介してくれる「アヤミハビル館」という施設があります。

→ アヤミハビル館ホームページ

私も一度だけ行ったことがありますが、館内には生きたヨナグニサンが飼育されていたり与那国島の昆虫標本もたくさんあって、与那国島の自然に興味がある方には欠かせない観光スポットです。

ちなみに、与那国島ではヨナグニサンの事を方言で「アヤミハビル」と呼ぶそうです。

◆極限まで進化したヨナグニサン

ヨナグニサンは進化の過程において口が退化した生き物です。成虫になってからは食事を一切せず、寿命も一週間ほどしかないので生きている姿を見る機会はなかなかありません。

以前、真夏の夜に家族でドライブをしていたら、かなり衰弱したヨナグニサンが空から落ちてきました。噛んだり、刺したりするわけではないのですが、あまりの大きさに皆ビビッてしまい遠巻きに眺めるばかり…。

◆最後の大仕事

道端に落ちたままのヨナグニサン。体幅は約15センチ、大人の手のひら程の大きさがあります。

しばらく経っても再び飛び立てる様子ではなさそうなので、そっと車に乗せそのまま家路につきました。しかし、家に到着する頃には、かわいそうに息絶えてしまったのです。

手元にヨナグニサンがいる機会なんて滅多に無いのでじっくり観察していると、傍らに何やら小さなプツプツがたくさん落ちていました。

そうです、ヨナグニサンの卵です!

残りわずかな力を振りしぼって数十個の卵を産んでいたのです。
最後の大仕事をしっかり成し遂げたお母さんの姿に、同じ母親として感動したと同時になんとも切ない気分にさせられました(涙

◆何日経ったでしょうか…

生物に詳しい方にお聞きしたところ、ヨナグニサンの赤ちゃんはアカギの葉っぱが大好物だそうです。さっそく裏山に生えているアカギの大木から美味しそうな若葉をたくさん採って、卵の周りに置いてみました。

何日経ったでしょうか…。しばらく観察を続けていると、なんと可愛らしい幼虫が卵から孵って(かえって)いるではありませんか!

◆食べて、食べて、また食べて!

無事卵から孵った幼虫たちはムシャムシャ葉っぱを食べ続け、日毎にどんどん大きくなっていくのが分かります。とにかくアカギの若葉を食べまくるのですが、その若葉を調達するのが大変なくらいの食欲です。

大きくなるにつれ体は粉砂糖を振りかけた毛虫のようになり、そのままクリスマスケーキに飾りたいぐらいです。

しかし、こんなに真っ白だと自然界では目立ちすぎ?鳥などに一発で見つかって、かえって危険じゃないのかな…と心配になります。

来る日も来る日もひたすら食べ続けます。食欲旺盛な姿はずっと見ていても飽きません。

◆別れの時

毎日観察を続けていると当然わが子のように愛着もわきます。

いっそ羽化しても飼い続けたかったのですが、この子達が暮らす場所はやはり西表島の大自然です。ある程度大きくなったので自然へ返すべきと思いアカギの木に放してあげました。

生存競争の厳しい大自然を生き延び、立派な羽を広げて大空を舞いますように…。と親心ながらに祈ることしかできない別れの日でした。